【活動報告】ZERO INCIDENT WORKSHOPを開催しました。まず伝えたかったのは「事故は突然ではない」ということ
ZERO INCIDENT ワークショップのイベントが無事に終わりました。
今回は、いわゆる一方的な講義ではなく、
会場にいる皆さんと会話をしながら、実際にギアや画面を触ってもらいながら進めていく形で開催しました。
「ただ聞いて終わる」のではなく、
「自分ごととして考えて持ち帰ってもらう」ことを意識した時間をイメージしました。
今回用意したスライドは大きく2つ。
数としては多くありません。
でも、その2つに、今回どうしても伝えたかったことを詰め込みました。
目次
まず最初に伝えたのは、自分がなぜこの話をするのかということ
最初のスライドでは、自分の経歴も含めて話をしました。

これまで自分が経験してきた大きな災害。
そして、ほんのわずかなボタンの掛け違いで起きてしまった事故。
そのいくつかの事例を挙げながら、なぜこんなことが起きるのかを皆さんに考えてもらいました。
事故というと、多くの人は「大きなミス」や「決定的な失敗」をイメージすると思います。
けれど、実際の現場で起きていることは、必ずしもそうではありません。

ほんの小さな見落とし。
少しの油断。
「まあ大丈夫だろう」という感覚。
ルールから少しだけ外れた判断。
そういう小さなイレギュラーが積み重なって、やがて取り返しのつかないことにつながっていく。
イレギュラーが300あったら、インシデント30個につながってしまう。
30個のインシデントは、1つの大きなアクシデントにつながってしまう。
今回のワークショップでは、その流れをできるだけわかりやすく伝えるために、この考え方をお伝えしました。
もちろんこれは単純な数字遊びではありません。
現場では、ほとんどの異変が「その場では大事故にならずに終わる」ことのほうが多い。
だからこそ、人はその異変を軽く見てしまう。

でも、本当はそこにもう入口がある。
何も起きなかったから安全だったのではなく、たまたま大きな事故にならなかっただけかもしれない。
この感覚を持てるかどうかで、その後の判断は大きく変わってくると思っています。
危険と安全を、感覚ではなく言葉にして考える
この最初のパートでは、危険と安全の概念についても、少し細かく言語化しながら話をしました。
山に入る人も、走る人も、「危ない」「安全そう」という言葉は普段から使っています。
でも、その中身をどこまで言葉にできているかというと、意外と曖昧なことが多い。
危険とは何なのか。
安全とは何なのか。
何も起きていない状態を安全と呼ぶのか。
装備があることが安全なのか。
経験があることが安全なのか。

こういうことを、ただ感覚で流すのではなく、一度立ち止まって考える。
それだけでも、自分の行動はかなり変わってきます。
特にトレイルランや登山では、「気合い」や「経験則」だけで処理されてしまう場面がまだまだ多い。
でも、だからこそ、こういう場で一度整理しておく意味があると感じています。
遭難は突然起きるのではなく、違和感を見落とした先にある
2つ目のスライドで伝えたのは、遭難についてです。

遭難というと、何か特別なことが起きて、突然その瞬間に始まるような印象を持つ人もいるかもしれません。
けれど、実際にはそうではないと自分は思っています。
遭難は、いきなり完成形でやってくるものではない。
その前には必ず、小さな違和感があります。
「ちょっと道が違う気がする」
「さっきから踏み跡が薄い」
「予定より時間がかかっている」
「なんとなく嫌な感じがする」
そういう、本当に小さな違和感です。
でも、その小さな違和感を見逃してしまう。
あるいは、見ないことにしてしまう。
「まあ行けるだろう」と進んでしまう。
そこが、遭難の入口になっている。
午後に山へ入る前に伝えたかったこと
ただ歩くだけではなく、何を見て、何を感じて、どこに違和感を持つべきなのか。
そこを意識してもらいたい、という前振りとしてこの話をしました。
この話は、午後の山歩きの際に皆さんに気をつけてもらいたいことの前振りとしてお伝えしたものでした。
午後に実際に山に入る前に、ただ歩くだけではなく、何を見て、何を感じて、どこに違和感を持つべきなのか。
そこを意識してもらいたかったからです。
山の中で危険を避けるというのは、崖や滑落箇所だけを警戒することではありません。
もっと手前の、「何かがおかしい」という微妙なズレに気づけるかどうか。
その感覚を育てることが、とても大事だと思っています。
会場ではレインウェアについてもかなり細かく話しました
今回は座学だけではなく、実際のギアもかなり持ち込みました。

トレイルラン用のかなり軽いものから、
豪雨でもしっかり対応できる厚手のものまで、いくつか実物を見てもらいながら話をしました。
パタゴニア、ファイントラック、モンベル。
どのメーカーも本当に素晴らしいですし、それぞれに一長一短があります。
結局のところ、何を優先するかで評価は変わります。
軽さを取るのか。
しっかりした防水性を取るのか。
行動中の快適さを取るのか。
非常時の安心感を取るのか。
その違いをできるだけわかりやすく説明しながら、実際の用途をイメージしてもらいました。

現時点で総合的によくできていると感じているモデル
パタゴニアのトレントシェルジャケット、
そしてファイントラックであればエバーブレスフォトンジャケットあたりは、
それぞれかなり抜けていると感じています。
もちろん絶対の正解ではありません。
ただ、現場感覚としてしっかり現場で使えると感じるモデルであることは間違いないと思っています。
また、レインウェアは買って終わりではありません。
どんなにいい製品でも、しっかり手入れをしなければ、撥水性は急に落ちてきます。
だから今後は、性能の話だけではなく、手入れの仕方や、どういう状態になったら見直すべきか、といったところも合わせて説明していきたいと思っています。
ライトも、スペックだけではなく現場感覚で話した
次にライトの展示です。
今回はLedlenser様からご提供いただいているライトに加えて、
自分が過去に使ってきたライトも持ち込みました。
単純な明るさの比較だけではなく、レンズの特徴、配光の違い、充電のしやすさ、現場での扱いやすさなど、かなり実践的な話ができたと思います。

ライトは「明るければいい」というものでもありません。
山の中でどう見えるか。
雨の中でどう使えるか。
手袋をした状態で扱いやすいか。
充電方法は現実的か。
夜間の行動でストレスにならないか。
そういう細かい部分が、実際にはかなり大きい。
会場では、実際に手に取ってもらいながら話を進めたので、
単なる商品説明ではなく、
「自分ならどれを選ぶか」を考えてもらうきっかけを今後も提供していきたいと思います。
今回は「聞く講習」ではなく「会話するワークショップ」に!
今回、自分が一番意識していたのはここかもしれません。
ただ前に立って話して、皆さんが聞いて終わる。
私は100人以上を前に話をすることもありますが、
今回はそういう講習にはしたくなかった。

会場にいる皆さんと会話をしながら進める。
わからないことがあればその場で聞いてもらう。
実際にギアを触ってもらう。
自分の持っている装備を見直すきっかけにしてもらう。
今後も、そんな参加型の時間にしたいと思います。
安全の話というのは、どうしても堅くなりがちです。
でも本当は、もっと生活の延長にあっていいし、
もっと自分の行動に近いところで考えられるべきだと思っています。
だからこそ今回は、
できるだけ「その場で話せる」「その場で触れる」「その場で納得できる」
そんな形を意識して進めました。
前半だけでも、かなり多くのことを共有できたと思います。
そして、このあと後半では、実際に山に入った時間のことを書いていきたいと思います。