実績・活動記録

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ZERO INCIDENT WORKSHOP2026.02.10

ZERO INCIDENT PROJECT

コーチ・チーム代表・主催者・運営スタッフのための1dayカンファレンス(講義+実地)を行います。

トレイルランの練習会やイベントは、参加者にとって最高の体験になる一方で、ひとつの判断ミスが事故につながる現場でもあります。
そして事故は、当日の運や個人の頑張りだけで防げるものではありません。

現場の安全を左右するのは、主催者側の“設計”です。

本カンファレンスの目的は、練習会やイベントを「開催する側」が、事故を未然に防ぐための判断と仕組みを学び、明日から自分の現場に導入できる“運営の型”を考え、話し合い持ち帰るための1日を目指します。

「Leaders Conference 」と 「Workshop 」の棲み分け

ZERO INCIDENTは、目的と対象を明確に分け、次の2つの枠で開催します。

① ZERO INCIDENT PROJECT – Leaders Conference(イベント主催者向け)

コーチ・チーム代表・主催者・運営スタッフなど、現場を支える側(運営側)が対象です。
主催者として必要な「安全設計」「判断基準」「通報判断」「地図による事前の危険抽出」を学び、事故を起こさない体制づくりを考えます。参加費は取らず、まずは参加してもらうことを目的とします。

② ZERO INCIDENT Workshop(イベント参加者向け)

登山やトレイルランを始めたばかりで、不安のある人、初心者だけでなくアウトドアを安全に楽し見たい一般参加者が対象です。
「迷わない」「無理をしない」「留まれる」「伝えられる」など、自分の安全を守る基礎スキルを身につける場として、4月以降の第二日曜日に定期的に開催します。また、山岳会、チームでの講習会は別途日程でも開催できるようにします。

ワークショップ形式とし、安全管理上概ね10人ほどを参加上限とし5,000円程度の運営協力費用を参加費とし、開催場所や機材の費用、スタッフやゲスト講師への謝礼・交通費、登山道整備や朽ちた看板などの修復費用に充てます。

※今回は「Leaders Conference(主催者向け)」の案内です。


このカンファレンスが扱う“安全の枠組み”

ZERO INCIDENTでは、安全を気合いや個人の経験ではなく、再現性のある枠組みとして整理します。
本カンファレンスで扱う中心テーマは、次の4領域です。

① ルール(Rule)

守れるルールをつくる。
初心者も混ざる現場で、どのようなルールが必要かを考えます。
例)持ち物(出発前の必携品の相互チェック)や迷った時の行動(立ち止まる・絶対に走らない)など。

② 導線(Flow)

事故は山の中だけで起きるわけではなく、導線の設計ミスが事故の芽になります。
「迷いの起点」「遅れの発生点」「集中力が途切れる点」を可視化します。

③ 判断基準(Decision)

中止・短縮・撤退・離脱。
判断が遅れるほど被害は拡大します。

医療的根拠のあるトリアージを学習し、
「いつ・誰が・何を根拠に」判断するのかを言語化し、現場で使える形にします。

④ 連絡体制(Communication)

連絡がをどのようにとっていくか、
IP無線・IBUKI・ココヘリ・スマホなど、現場での連絡設計を整理し、通報判断の遅れを潰します。


対象(このカンファレンスはこんな方のための1日です)

  1. トレイルランの練習会を開催しているコーチ、チーム代表者
  2. 大会・イベントの主催/運営に関わるスタッフ、ショップ、コミュニティ運営者
  3. 初心者が集まる“入口の場”を持ち、安全への責任を感じている方
  4. 過去にヒヤリハットや通報対応があり、次は事故にしたくない方
  5. 安全管理を「個人依存」ではなく「仕組み」で回したい方

この1日で持ち帰るもの(ゴール)

  1. 自分の練習会・イベントに“そのまま導入できる”安全運用の設計図
  2. 遅れ・体調不良など、参加者をトリアージで判断・通報する方法
  3. 通報の境界線(トラブルで収束できるのか/事故として110/119通報すべきか)
  4. 地図やアプリ(ジオグラフィカ)から「事故が起きる場所・起きやすい構造」を読み解く力
  5. 現場で判断がブレない“中止・撤退基準”とは?
  6. 連絡体制はどう取るか(連絡テンプレ/役割分担/チェックの仕組み)

当日の構成(午前:講義/午後:実地)

午前:事例から学ぶ「事故が起きる構造」

私は東日本大震災、御嶽山噴火災害、伊豆大島土砂災害をはじめ多くの大規模救助に携わり、ハイパーレスキュー隊、22,000件を超える現場での救急隊長・山岳救助隊長として活動して来ました。

特に奥多摩で経験した16年間・640件以上の山岳救助事案から、実際の遭難事例をピックアップ。「なぜ起きたか」「なぜ防げなかったか」「どこが生死の分岐点となったか」を主催者視点で考えます。

ゲスト講師:マツモトケイジさん

(地図から見えるインシデント)

今回の捜索でも現地での協力、捜索のための赤色立体地図の実装など大変お世話になりました。

「ジオグラフィカ」開発者の松本さんと共に、地図から「事故につながりやすい地形」「戻れない場所」を読み解きます。地図を、現在地の確認だけでなく「事故予防の道具」として活用します。

ナビゲーター・共同開催:石川弘樹さん

(現場で事故を起こさない“運営の視点”)

トレイルランの第一人者、そしてアドベンチャーレーサーとして世界中の多くの大会やイベントを経験、大会やイベントを手掛ける石川さんより、参加者の安全を守るための運用を共有いただきます。精神論ではなく、現場で実装できる具体的な視点を参加者で考えます。

ナビゲーター・開催者:松村 和大

(事故発生時の判断と通報の境界線)

トラブルで済むのか、事故として通報すべきか。その判断の遅れは致命的です。

過去の16年分のデータからピックアップした遭難データをもとに、実際のルート上で「どこで迷い、どう進行しどのような結果になったか」を検証します。


午後:「現場で考える安全」

午前の学びを、実際のフィールド(鳩ノ巣・花折戸尾根周辺)で検証します。

机上の空論で終わらせず、実際の地形や分岐を見ながら「事前にどんな準備があれば防げたか」を考えます。


連絡体制(Communication):IP/アナログ無線を使って「現場の把握」を体験する

連絡体制の実証実験

協力:株式会社デジタス様

デジタス様は私の第二の故郷三陸の通信の雄。東日本大震災ではいち早く電源供給を行うなどの縁の下で多くのシステムを支えたり、先の大船渡の森林火災では、広域消防の共通無線を担当し立ち上げるなど多くの大規模災害での実績があります。

奥多摩における捜索でもIP無線を度々使用させて頂いた経緯があり、私が様々な活動を行う上でデジタス様の協力なしでは成り立ちません。

今回は大会救護でも使用されるIP無線のデモ機/アナログ機を使い、実際のシステム構築も行います。山中で「どの程度状況を把握できるか」を体感します。


開催概要

  1. 名称:ZERO INCIDENT PROJECT – Leaders Conference
  2. 日程:2026年3月15日(日)
  3. 時間:午前9:00〜12:00 講義 午後12:45〜実地 16:00解散
  4. 場所:鳩ノ巣周辺(奥多摩)

必携装備品

  • トレイルランニング/登山に適した服装(走ったりはしません。)
  • シューズ
  • 飲料水
  • 行動食
  • 雨具(天候に関わらず携行)
  • 防寒着
  • スマートフォン
  • ヘッドライト
  • 個人用ファーストエイド
  • 紙地図
  • コンパス
  • モバイルバッテリー

参加者への宿題

今回のカンファレンスでは、ひとつ宿題を出させてください。

「困った時に、自分の存在を他者へ知らせるためのもの」を必ず1つ持参してください。

高価な装備である必要はありません。

  • ヘッドライト
  • 反射材
  • 携帯電話
  • 予備バッテリー
  • 発煙筒
  • ミラー
  • 目立つ色のウェア

どんなものでも構いません。

大切なのは、
「自分が動けなくなった時、どうやって気づいてもらうか」
を一度真剣に考えることです。

事故は、“動けなくなる瞬間”から始まります。
そこから先は、自分の位置を伝えられるかどうかが分岐点になります。

午後のフィールドセッションでは、
なぜそれを選んだのか、
どんな状況を想定しているのかを共有して今後に繋げていきたいと思います。

安全は、装備の数ではなく、
想定と準備の深さで決まります。

この宿題は、
「アウトドアにセーフティという選択を」
自分自身で体現していただくための第一歩です。

“誰かが助けてくれる前提”ではなく、
“自分が知らせる責任”を持って山に入ろう、という意識づけにつなげたいと思います。


今後について

  1. Leaders Conference:主催者向け(安全運用の設計・判断・連絡体制を作る)
  2. Workshop:参加者向け(個人が不安を減らし安全に動ける力を育てる)

ZERO INCIDENTは単発ではなく、
過去にこの山域で事故に遭われたご家族・ご親族のバックアップも受けながら
安全を文化として根付かせるプロジェクトとして継続していきます。


最後に

事故は、現場で起きた瞬間から「通報や現場対応・救助の問題」に見えます。
しかし多くの場合、事故の芽はその前にあり、主催者の設計で減らせます。

トラブルで止める。事故にしない。
そのための“運営の型”を、鳩ノ巣の現場で一緒につくっていけたらと思います。