実績・活動記録

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イベントレポート2026.04.13

【活動報告】ZERO INCIDENT WORKSHOP VOL.01「遭難事故は突然起こるわけではない」

ZERO INCIDENT WORKSHOPを開催しました。

今回は、午前中の講義と午後の山での実地を通して、
「事故は突然起きるのではなく、小さな違和感の積み重ねから始まる」ということをお伝えしました。

一方的に話して終わる講習ではなく、
会場にいる皆さんと会話をしながら、実際にギアを触ってもらいながら進める形で行いました。
「聞いて終わる」のではなく、自分の行動に置き換えて考えてもらうことを意識したワークショップです。

午前中は、事故がなぜ起きるのかを考える時間にしました

午前中は、まず自分のこれまでの経験をもとに、
どうにもできない大きな災害や、
反対にほんのわずかなボタンの掛け違いで起きてしまった事故の事例を紹介しました。
そして、なぜそのようなことが起きるのかを、参加者の皆さんと一緒に考えていきました。


私が経験した御嶽山の噴火に伴う救助活動の話(どうにもできない事故の一つ)

事故というのは、何か一つの大きなミスだけで起きるわけではありません。
小さな見落としや油断、「まあ大丈夫だろう」という感覚が積み重なった先にあります。

イレギュラーが積み重なることでインシデントが生まれ、インシデントの積み重ねが大きなアクシデントにつながる。

現場では、多くの異変が「その場では大事故にならずに終わる」ことのほうが多いものです。
だからこそ、人はその異変を軽く見てしまう。

でも本当は、そこにもう入口がある。何も起きなかったから安全だったのではなく、たまたま大きな事故にならなかっただけかもしれない。
この感覚を持てるかどうかで、その後の判断は大きく変わってきます。

また、危険と安全の違いについても、感覚だけで終わらせず、できるだけ言葉にして整理しました。
山に入る人も、走る人も、普段から「危ない」「安全そう」と言いますが、
その中身をきちんと言語化できる人は少ないですしそれを考える機会は意外と少ないものです。

今回の講義では、その部分をあらためて見つめ直してもらう時間にしました。


「登山届」が山に入る命綱、であることもお話ししました。

遭難は突然起きるのではなく、違和感を見落とした先にある

もう一つお伝えしたかったのは、遭難は突然完成形で起きるわけではないということです。

「ちょっと道が違う気がする」
「思ったより時間がかかっている」
「なんとなく嫌な感じがする」

そうした小さな違和感を見逃さずに持てるかどうか。
そこが遭難を防ぐ入口になります。

午後に山へ入る前にも、この話を前振りとしてお伝えしました。
ただ歩くだけではなく、何を見るべきか、どこに違和感を持つべきかを意識してもらいたかったからです。

遭難の入口は、派手な危険箇所だけではありません。
むしろその手前にある「何かがおかしい」という小さなズレに気づけるかどうかが、とても大切です。

ギアの話も、実物を見ながら行いました

今回は座学だけではなく、実際のギアもかなり持ち込みました。

特にレインウェアについては、会場でも反応が大きかったところです。
トレイルラン向けのかなり軽いものから、しっかり雨に耐えられる厚手のものまで持ち込み、それぞれの特徴や違い、さらに手入れの重要性についても説明しました。

パタゴニア、ファイントラック、モンベル。
どのメーカーも素晴らしく、それぞれに一長一短があります。
軽さを取るのか、防水性を取るのか、行動中の快適さを取るのか、非常時の安心感を取るのか。
その違いを、できるだけわかりやすくお話ししました。

また、どんなに良いレインウェアでも、しっかり手入れをしなければ撥水性は落ちてきます。
買って終わりではなく、使い続けるためにどう手入れするかも、安全の一部だと考えています。

ライトについても、Ledlenser様からご提供いただいているモデルのほか、自分が実際に使ってきたものを並べ、明るさだけではなく、光の見え方の特徴や充電のしやすさ、現場での使いやすさといった観点からお話ししました。

ライトは「明るければいい」というものではありません。
山の中でどう見えるか。
雨の中でどう使えるか。
手袋をした状態で扱いやすいか。
充電方法が現実的か。
そうした細かい部分が、実際にはかなり大きいと感じています。


その中でも特に優秀だと思えるライトがledlenzerです。

写真は今回改良され発売されたH8Rの25周年モデルサブライトとしても優秀なNEO1R
ハンドライトでバックアップやサポートに使うならP7Rの25周年モデル、自分で山を走る時に使うハンドライトならP5RかMT10あたりが良いと思います。(ぜひ触ってみてください)


応急救護セットは何を持つべきか?なども説明しています。


当日の安全管理や今後も山に入る際に使える「IP無線」も体験してもらいました。
(ご自身が山へ行っている間、家族と持つことで離れていても必要な時に通信が行えます)

午後は実際に山に入り、講義の内容を現地で確認しました

午後は実際に山に入り、講義でお伝えした内容を、現地で確認しながら歩きました。

事前にジオグラフィカやいちおくるくんを作動させて確認しています。

ただ歩くだけではなく、何を見るべきか、どこに違和感を持つべきかを意識しながら山に入ることで、参加者の皆さんにも多くの気づきがあったのではないかと思います。

また、Garmin、CorosなどのGPS Watchのバックトラックの機能なども使ってもらいました。
これは、迷ってしまった時に動かすことで確実に元の場所に戻れる大事な機能です。

山の中で危険を避けるというのは、崖や滑落箇所だけを警戒することではありません。
もっと手前の、小さなズレに気づけるかどうか。
午前中に話した内容と、実際の山の風景とをつなげながら歩くことに、このワークショップの意味があります。

参加者の方々からは、実際にトレイルランを始めたいけど何をして良いかわからない人などにもぜひ受けてもらったほうが良い講習だと言っていただきました。今後は電波の届かないところでどのような通信が行えるかなども含めて違うコースも考えていきたいと思っています。

安全の話は堅くなりがちですが、本当はもっと身近で、自分の行動に直結するものとして考えるべきだと思っています。
その意味でも、今回の時間はとても良い形になったと感じています。

次回は5月10日、鳩ノ巣で開催します

次回のZERO INCIDENT WORKSHOPは、5月10日に奥多摩・鳩ノ巣で開催します。
https://moshicom.com/143736

ちょうどこの時期は、鳩ノ巣で遭難事故が起きてから一年という節目でもあります。
次回は、なぜ低山で事故が起きてしまうのかということを、あらためてしっかりお伝えしたいと思っています。

あわせて、引き続き地図の見方についても触れながら、これから梅雨を迎える時期に向けて、レインウェアの正しい手入れについても説明する予定です。

そして今回は、特別ゲストとして、昨年遭難された方のご家族である海くんが来てくれる予定です。
ご家族という立場から、なぜ事故が起きてしまったのか。
何が見えていて、何が見えていなかったのか。
彼なりの視点で、彼なりに分析したことを話してくれるとのことです。

事故は、現場だけの話では終わりません。
その後に残される家族の時間や思いも含めて、考えなければいけないことがたくさんあります。
だからこそ、今回もまた意味のある時間になるはずです。

5月の新緑が気持ちいい奥多摩で、ぜひ一緒に学びましょう。
多くの方のお越しをお待ちしています。

ご参加いただきありがとうございました

今回参加してくださった皆さん、ありがとうございました。

ZERO INCIDENT WORKSHOPは、これからも何度来ても学びがあり、
何度来ても気づきがある場
として続けていきたいと思っています。
安全を、特別な人だけのものではなく、山に入るすべての人のものとして少しずつ言葉にしていく。
そんな取り組みを、これからも積み重ねていきます。