finetrack TOKYO BASE × MEROSで安全講習を開催!
このたび、2026年10月14日(水)にfinetrack TOKYO BASEで安全講習を担当させていただくことになりました。
まずは、このような機会をいただいたfinetrackの皆さまに心より感謝申し上げます。
目次
御嶽山噴火災害がきっかけで使い出したfinetrack
私がfinetrackの製品を使うようになったのは、2014年の御嶽山(おんたけさん)噴火災害での山岳救助活動がきっかけでした。何日も帰れない、その中で最低限の準備を。
その時、手に取ったのが12年前のベースレイヤーでした。

大きな噴煙に向かって登ってゆく
その後、東京消防庁山岳救助隊として活動する中で、奥多摩をはじめとする山岳地域で数多くの現場を経験してきました。
雨の中の救助、沢での活動、雪山での捜索、長時間に及ぶ搬送、
昼夜を問わない出動。そんな厳しい環境の中で、
いつも当たり前のように身に着けていたウェアのひとつがfinetrackでした。

沢登り中のアクシデントに対応
現場に「このメーカーだから安心」ということはありません。
ではfinetrackはどんな災害で自分をサポートしてきてくれたのでしょうか?
「濡れ」に向き合い続けてきたメーカー
私がfinetrackを信頼している理由は、デザインでも軽さでもありません。
もちろんそれらも優れているのですが、現場で本当に価値を感じてきたのは、「濡れ」と真正面から向き合い続けていることでした。
山で危険なのは、動物や道迷いだけではありません。
本当に危険なのは、濡れによって体温を奪われ、動けなくなることです。
汗、雨、沢、結露——山では実にさまざまな理由で身体が濡れます。
その濡れが低体温につながり、判断力を奪い、行動不能となって遭難事故へ発展していく。
これは山岳救助の現場で何度も目にしてきた現実です。
だから私は、レインウェアやドライレイヤーを「雨具」ではなく「命を守る装備」だと考えています。
公務員だったからできなかったこと
消防職員として勤務していた頃は、立場上、製品について発信したりイベントに参加したりすることはほとんどできませんでした。
「本当に良い」と思っていても、それを言葉にする機会は限られていたのです。
退職し、MEROSとして活動を始めた今、ようやくその恩返しができる立場になりました。
これからは安全講習や大会救護、山岳活動などを通じて、現場で感じたこと、各メーカーのウェアの適材適所とは、を率直に発信していきたいと思っています。
商品を紹介するのではなく、「理由」を伝えたい
私が目指しているのは、商品の紹介ではありません。
伝えたいのは「なぜ、その装備が必要なのか」ということです。
山岳救助隊の時にはGL(グランドライン)でウェアを明確に分けていました。
山岳救助隊といっても山でばかり救助が発生するわけではありません。
道路や登山道より下では、川や沢の活動になります。
その時は登山靴ではなく、沢にも使えるシューズや装備、そしてfinetrackのウェアを指定していました。
逆に雪山で長時間にわたる待機が予想される現場、
稜線でヘリを使用したりする現場にはfinetrackではない止まっていても暖かいダウンを使っていました。

レインウェアもさまざまなメーカーにさまざまなアイテムが。
自然と向き合う中で、レインウェアを持っていることや、ドライレイヤーを着ていること自体が大切なのではありません。
その装備をなぜ持つのか、いつ使うのか、どのような場面で命を守るのか。
そこまで理解して初めて、安全につながると考えています。
これからは現場目線でフィードバックしていきたい
現在は、講習会やトレイルランニング大会の安全管理、山岳活動などを通して、
ウェアのフィードバックやインプレッションも積極的に発信しています。
良いところだけを並べるのではなく、
どんな場面で役立ったのか、
どんな人・場面に向いているのか、
どう使えば性能を最大限に発揮できるのか。
現場で使い込んできた立場だからこそ伝えられる情報を届けていきたいと思います。
「無事に家まで帰る」
今まで山岳救助の現場では、事故が起きてから行動していました。
今、MEROSを含めた活動で目指しているのは、そのように事故が起きてから行動することではありません。
事故が起きる前に、その人が安全に帰宅できるように共に学ぶことです。
山頂に立つことでも、レースを完走することでもなく、無事に家まで帰ること。
これが本当のゴールなのです。
これからもMEROSは、その想いを大切にしながらfinetrackの「生還するための考え方」を共に伝え続けていきます。
そして、長年支えていただいたfinetrackへの感謝と恩返しの気持ちを込めて、一歩ずつ活動を積み重ねていきたいと思います。
10月14日(水)finetrack TOKYO BASEで(仮称)「帰宅部」を開催します!
秋の奥多摩で実際に起きた遭難事例をもとに、
遭難はいつ始まったのか、
どこで判断を変えられたのか、
どうすれば防げたのか、
それを、皆さんと一緒に考える90分です。
遭難を怖い話で終わらせず、次の山で少しだけ判断を変えるきっかけになればと思っています。
日時:2026年10月14日(水)18:00〜19:30
会場:finetrack TOKYO BASE
参加費:無料(定員20名)
この活動を「帰宅部」と名付けたい。
この安全講習を、「帰宅部」と名付けて、これから定期的に開催していきたいと思っています。
ふざけた名前だな、と思われる方もいるかもしれません…。
しかし、無事に帰ってくるということは、頂上に立つことと同じくらい?
いやいや、それ以上に大切なことです。
どれだけ素晴らしい山行も、家の扉を開け、
ふっとため息をついたその瞬間に、はじめて完結します。
だから「帰宅」という概念はとても大切なことです。
旅を終わらせることは次の旅の始まりです。

LIKE THE WIND 日本版 #9 より「旅の終わらせかた」(2026/8/25発売)
WORDS AND PHOTOGRAPHY BY KAZUHIRO MATSUMURA
「部活」懐かしい響きですね!身構えた、有料の講習会ではなく、
仕事帰りの表参道に少しだけ立ち寄って、
誰かの話を聞いたり、自分の経験を話したりできる場所にしたい。
山の経験が長い人も、これから始める人も関係なく、
「無事に帰ること」について気軽に話せる部室のような場所。
そんなイメージです。
この二つの意味を込めて、finetrackさんと一緒に「帰宅部」構想を作っていきたいと思っています。
ZERO INCIDENTの活動について
今回の講習会とは別に、MEROSでは「ZERO INCIDENT」という安全講習を継続的に開催しています。
こちらは、座学だけではなく登山道も歩くイベントです。
実際に山へ入り、過去に遭難が起きた場所や、道迷いが発生しやすいポイントを歩きながら、
「現場」で学ぶことを大切にしています。

地図を読むこと。
ルートを判断すること。
レイヤリングを実践すること。
雨や気温の変化を身体で感じること。
「知っている」ではなく、「できる」こと。
それがZERO INCIDENTのテーマです。
また、この講習会は有料で開催していますが、
参加費の一部は私たちの活動だけではなく、山へ還元しています。
- 登山道整備
- 遭難防止のための登山ポストの設置・整備
- 安全啓発活動
- 地域の山岳環境保全活動
「学ぶこと」が、「山を守ること」につながる。
そんな循環をつくっていきたいと考えています。
今回のfinetrackでの安全講習は、室内で安全について考える「入口」です。
そしてZERO INCIDENTでは、その知識を実際の山で体験し、
自分の技術として身につける「実践編」として位置付けています。
もし今回の講習をきっかけに、「もっと現場で学んでみたい」
と思っていただけたら、ぜひZERO INCIDENTにもご参加ください。
事故が起きてから助けるのではなく、
仲間の中から事故を起こさない人を一人でも増やすこと。
MEROSはこれからも、その想いを大切に活動を続けていきます。
第6回 ZERO INCIDENT WORKSHOP
日時:2026年9月5日(土)9:00〜15:30
会場:ORENGE BEAR事務所(青梅線鳩ノ巣駅) 及び 花折戸尾根
参加費:5,000円(定員10名)