実績・活動記録

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ZERO INCIDENT WORKSHOP2026.07.26

【開催報告】ZERO INCIDENT WORKSHOP vol.4|鳩ノ巣で「道迷いの構造」を歩いて学ぶ

連日、厳しい暑さが続く奥多摩。

今回の「ZERO INCIDENT WORKSHOP vol.4」は、奥多摩・鳩ノ巣を拠点に開催しました。

当初予定していたコースは、気温や参加者の体調を考慮して短縮。その分、今回のテーマである「道迷いが起きる構造」について、座学とフィールドの両方からじっくり考える時間を多く取りました。

午前中は、疑問を持ち寄る座学から

午前中は、スライドや過去に発生した事例を見ながら、山で起こる事故や道迷いについてお話ししました。

今回参加された方からは、次のような声がありました。

  • まだ登山経験が少ない
  • 地図読みについて勉強したい
  • 山で何か起こったとき、どうすればよいのか分からない

一方的に講義を進めるのではなく、参加した皆さんから出てきた質問をきっかけに、話を広げていくのがこのワークショップのスタイルです。

話題は、ときどき本筋から脱線します。(主催者本人の性格上w)

しかし、その脱線の中にこそ、「実際に山で困っていること」「今まで誰にも聞けなかった疑問」が隠れているはず、話しはそんな時に盛り上がります。

装備のこと、登山道の見え方、地図の読み方、道に迷ったときの判断、救助を呼ぶタイミングなど、さまざまな話を交えながら、楽しく疑問を解決していく時間となりました。

「山で困ったときに開くアプリ」を使ってみる

山で何かが起きたとき、まず必要になるのが、「自分がどこにいるのかを知ること」と、「その場所を誰かに伝えること」です。

今回は、最近コツコツ作成中の「山で困ったときに開くアプリ」を実際に使いながら、スマートフォンで現在地を確認する方法や、自分の位置を家族や仲間などに知らせる方法を学びました。

山の中で「ここはどこだろう」と思ってから、初めて地図アプリを操作するのは簡単ではありません。

山では自分はどこにいるか、自分はどこにいくか、自分はどこにいたか、全てが大切です。

通信状況が悪い、焦って操作できない、現在地を確認できても相手にうまく説明できない――。こうしたことは、実際の山では十分に起こり得ます。

 

だからこそ、何も起きていないときに一度使っておくことが大切です。

現在地を確認するだけでなく、

  • 誰に知らせるのか
  • 何を伝えるのか
  • その場にとどまるべきか、戻るべきか

といった、位置情報を確認したあとの行動についても一緒に考えました。

「山で困ったときに開くアプリ」を開く

ランチセッションは、レインウェアについて

昼食を取りながらのランチセッションでは、レインウェアについて学びました。

レインウェアは、単に「雨に濡れないための服」ではありません。山の中で雨や風から身体を守り、体温の低下を防ぐための重要な安全装備です。

しかし、長く使っているうちに撥水性が低下したり、汚れたままスタッフバッグへ入れっぱなしになったりすると、本来の性能を十分に発揮できなくなります。

  • 買ってから一度も洗っていない
  • 雨に降られると、生地が濡れたような色になる
  • 使ったあとも袋に入れっぱなしになっている

こうした状態を確認しながら、洗濯や乾燥、撥水性を保つための手入れについてお話ししました。

また、レインウェアは「濡れなければよい」というものでもありません。

雨や汗で身体が濡れれば、夏でも風によって急速に体温を奪われることがあります。一方で、透湿性が低下して内側が蒸れれば、暑い時期には熱がこもり、熱中症につながる可能性もあります。

昼食を取りながら装備について気軽に質問できる、実践的なランチセッションとなりました。

6名で、実際の山へ

午後は6名で山へ入り、午前中に学んだことを実際の地形の中で確認しました。

今回、特に時間をかけたのが、「鞍部(あんぶ)」で起こる道迷いです。

鞍部とは、尾根と尾根の間にある、地形が低くなった場所のこと。登山道の方向が変わったり、別の尾根や沢筋が接続したりするため、進む方向を見失いやすい場所でもあります。

歩いてきた勢いのまま前方へ進むと、本来の登山道ではない尾根や、踏み跡のように見える場所へ入り込んでしまうことがあります。

地図の上では単純に見える場所でも、実際に立ってみると、

  • こちらのほうが道らしく見える
  • 自然に歩いていくと、こちらへ進んでしまう

という場所があります。

今回は、過去に実際の道迷いが発生した尾根にも入り、なぜ人がその方向へ進んでしまうのかを体感してもらいました。

道を間違えた人の判断が、特別おかしかったわけではありません。

その場に立って周囲を見ると、誰でも同じ方向へ進んでしまう可能性があることが分かります。

一度登山道を外れると、なぜ戻れなくなるのか

登山道を外れた直後であれば、少し戻るだけで復帰できることもあります。

しかし、「もう少し進めば道があるかもしれない」と歩き続けてしまうと、登山道との距離は次第に広がっていきます。

山の中では、振り返った景色が、歩いてきたときとはまったく違って見えます。

小さな尾根や窪み、倒木や植生によって視界が遮られ、自分がどこから来たのか分からなくなることもあります。

さらに、下り方向へ進んでしまえば、急斜面を登り返すことへの心理的・体力的な抵抗も大きくなります。

こうして、最初はわずかだった登山道とのずれが、時間の経過とともに大きな道迷いへ変わっていきます。

今回は、実際に登山道を外れた場所から周囲を観察し、

  • どの方向が道に見えるのか
  • 本来の登山道はどこにあるのか
  • 戻ろうとしたときに、何が難しいのか

を確認しました。

午前中に練習したアプリも使いながら、自分たちの現在地や進行方向を確認し、地図と目の前の地形を照らし合わせていきました。

大切なのは、間違えないことだけではない

山の中で、一度も判断を間違えないことは簡単ではありません。

大切なのは、小さな違和感に気づくことです。

  • 最近、案内表示を見ていない
  • 登山道が急に不明瞭になった
  • 地図上の地形と、目の前の景色が合っていない
  • 予定していた方向と違う気がする

そんな違和感があったときに、立ち止まって確認できるかどうか。

道迷いを大きな事故にしないためには、進み続ける力よりも、立ち止まる判断や引き返す決断が重要になります。

そして、自分たちだけでは解決できないと判断したときには、現在地を確認し、早い段階で誰かに知らせることも大切です。

今回のワークショップでは、道そのものを覚えるのではなく、道迷いがどのように始まり、なぜ深刻になっていくのかを、実際の地形の中で感じてもらいました。

暑い日だからこそ、計画を変える

今回は暑さを考慮して、予定していたコースを短縮しました。

歩く距離は短くなりましたが、その分、一つひとつの場所で立ち止まり、地形を見て、考え、話し合うことができました。

長く歩くことだけが、山での経験ではありません。

天候や気温、メンバーの状態に合わせて行動を変えることも、安全登山に必要な大切な「山力」です。

安全に山へ行き、無事に帰ってくるために

ZERO INCIDENT WORKSHOPは、事故を起こさないための知識を一方的に学ぶ場所ではありません。

それぞれが抱えている疑問を持ち寄り、装備やアプリも実際に使いながら、山の中で一緒に考えるワークショップです。

参加してくださった皆さん、ありがとうございました。

次回も、季節や山の状況に合わせたテーマを取り上げながら、「安全に山へ行き、無事に帰ってくるための力」を身につけていきます。

次回は9/5(土)を予定しています。
テーマは秋山、夏からの変化に対応していくコツやトレーニングについてもお話しいたします。
https://moshicom.com/edit/entry/151213